第5 駐車場使用

 

11  マンションの駐車場についてはどういう法律が適用されますか。

 

1.駐車場の形態

 マンションにある駐車場としては、①敷地の一部を使った青空駐車場、②マンション本体の建物内にその区域を設けた屋内駐車場、③マンション本体とは別棟の駐車専用建物などがあります。

その駐車場内の地面ないし床にペンキ等の線で駐車区画を表示し、各区分所有者はそれぞれ駐車区画の割当てを受けてその場所を使用しています。

 青空駐車場のある敷地は区分所有者全員の共有地であり、屋内駐車場は全員が共有する共用部分です。

 

2.駐車場使用契約

 個々の区分所有者は青空駐車場であれ屋内駐車場であれ、共有者の一人としてその駐車場を使用する権利を有しますが、特定の駐車区画を独占して使用するためには、その使用を管理組合から許諾される必要があります。そこで通常は、管理組合との間で「駐車場使用契約」を結ぶことになります(標準管理規約15条)。

   駐車場使用契約の内容はそれぞれの管理組合の判断によって定められます。駐車場使用料をいくらにするか、使用期間の長さをどの程度にするかは自由です。通常の駐車場使用契約では使用期間を永久とすることはありませんから、その契約上の使用期間が経過すれば貸主の管理組合の側から解約することができます。駐車区画の数が利用希望者の数に足りないときは、管理組合は平等取扱いの見地から相当期間経過後に駐車区画の再割当をする必要があり、そのような再割当の実施をすることは、もちろん駐車場使用契約に違反するものではありません。

 以上のように区分所有者が特定の駐車区画を使用する権利は、管理組合と使用者との間の賃貸借契約(使用料の定めがないときは使用貸借契約)類似の関係によって生ずるものですから、排他的かつ永久の権利とは言えません。したがってこの権利を「駐車場専用使用権」と呼ぶことは誤解を招くおそれがあり適切ではないと考えられています。

 

3.駐車場専用使用権の分譲

 マンション分譲業者が建物区分所有権及び敷地共有持分権を分譲販売するのとは別に、マンション購入者に対し「駐車場専用使用権」を有償(高額の一時金であることが多いのです。)で分譲することがあります。そのような駐車場使用権は、当初定められた低額の月額使用料(あるいは無償)のままその購入者が永久に使用することができるものなのでしょうか。

   そのような「駐車場専用使用権」分譲契約では、一方において、分譲業者と特定購入者の間の売買契約書の中で「駐車場専用使用権」の分譲が定められ、他方において、その分譲業者とすべてのマンション購入者の間の売買契約書の中に上記の「駐車場専用使用権」を認める旨の文言が記載されるのが通常です。その結果、駐車場専用使用権の存在は全区分所有者の承認を得たことになるので「区分所有者全員の書面による合意があったときは、書面による(総会)決議があったものとみなす。」(区分所有法45条2項)との規定にしたがって、総会決議で定められたのと同様の効果が生じるのです。

したがってそのような場合は、たとえ総会において区分所有者及び議決権の各4分の3以上の特別多数の決議(区分所有法31条1項前段)という方法によっても、駐車場専用使用権そのものを否定することはできないという理屈になります。専用使用権者の権利に「特別の影響」(区分所有法31条1項後段)を及ぼすからです。

しかし、この問題についての最終的な結論としては、最高裁判所判決(平成10.10.30)が言うように、「これを使用料の増額についていえば、使用料の増額は一般的に専用使用権者に不利益を及ぼすものであるが、増額の必要性及び合理性が認められ、かつ、増額された使用料が当該区分所有関係において社会通念上相当な額であると認められる場合には、専用使用権者は使用料の増額を受忍すべきであり、使用料の増額に関する規約の設定、変更等は専用使用権者の権利に『特別の影響』を及ぼすものではないというべきである」と考えることになります。

 

4.駐車場使用権の譲渡・転貸

   標準管理規約15条3項は「区分所有者がその専有部分を、他の区分所有者又は第三者に譲渡又は貸与したときは、その区分所有者の駐車場使用契約は効力を失う」と定めています。管理組合の承諾なく譲渡、転貸されたとすれば、管理組合はその効力を否定して明渡しを求めることができるのです。ただし、従前において管理規約の定めを守らず、駐車場の譲渡転貸がずっと行われていたマンションで、突然過去に遡って譲渡転貸の効力を認めないと言って明渡しを求めることは、権利の濫用であるから許されないということになるでしょう。

 

5.駐車場使用料の徴収

   駐車場使用料の債権は共有物の管理に関する債権です。ですから、規約で区分所有者が負担することを定めておけば、区分所有法7条の先取特権が付与されますし、また同債権は債権者たる区分所有者の特定承継人に対しても行うことができます(同法8条)。

 


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