第6 管理組合の総会

 

17  書面決議というのはどういうことですか。

 

1.区分所有法45条

    建物の区分所有等に関する法律の45条によれば、「区分所有者の全員の承諾があるときは書面による決議をすることができる。」とされています。わざわざ集会を開かなくても良いのです。なぜそういう集会中心主義の例外を作ったかというと、書面で決議するというのは、集会を開かないのだから本当はよろしくないけれども、全員が書面ではっきり良いと決めた以上は、それも効力を認めますという考えなのです。ですから、書面で決める場合一人でも欠けますと、無効になるわけです。書面決議というのは全員がきちんと紙に書くからこそ効力があるのであって、一人でも欠けるとそれは集会の代わりにはなりません。

 

 2.東京高等裁判所での事件

 このことが平成元年3月20日の東京高裁判決で問題になりました。

    書面で決議したんですけれども、全員の署名がなかったため、この書面による決議は明らかに無効でした。例え100人ぐらいの区分所有者がいて99人が賛成としてサインしていても、一人でも欠ければその決議は無効です。それは集会を開かない以上当然のことです。全員のうちの4分の3をはるかに超える賛成があっても、集会を開かない以上は「集会中心主義」という原則に反するわけですから、無効なのです。その裁判の結果はどうなったかというと、やはりその書面決議は無効とされました。

    その東京高裁の事件はどういう経緯で何が争われたかについて説明しましょう。

    そのマンション管理組合では、理事長は総会で選任するという規約になっていました。ところが書面でそれを決議をしたのです。何人かの署名が欠けておりました。その書面による選任決議は無効です。その選任が無効のはずの理事長が、総会の招集をしました。それで総会が招集された。その招集手続きはきちんと規約どおりやられていました。その招集された総会で、共用部分の変更手続きをしました。共用部分の変更決議は4分の3が賛成すれば有効ですし、きちんと4分の3が確保されていました。ところが総会の出席者の中に不満な人がいたわけです。その決議に不満な人が、裁判に訴えたのですが、理屈はこうでした。招集した理事長は無効の書面決議で決められた理事長だから、そんな理事長は正しい理事長ではない、そういう理事長が招集した総会は無効だと、そういう論法で裁判所に訴えたのです。

    これについて、そんな小さな事まで取り上げて無効にしたら大変だというのが、東京高裁の判決でした。共用部分の変更決議はそれはそれでちゃんと有効に決議されているから無効ではない、理事長は無効の書面決議で選ばれた理事長であっても、それを今言い出したらその時いっしょに決議で決まった役員も全部無効と言わなければならなくなるし、その時決まった役員が特別の異議も出ないでずっと活動して来て今日に至っているのに、今ごろになってその理事長だけ無効だからその招集も無効だ、だから共同部分の変更決議も無効だというわけにはいかない、といういわば常識的な判断を裁判所はしたのです。ですから結論としては共用部分の変更の決議は有効ということになったのです。しかし、理屈としては、署名者が全員ではないときの書面決議というのは無効だというのは、裁判所も認めざるを得なかったのです。

 

  3.多数決ということの意味

    ですから、決議というのは総会を開いてやるからこそ、表決数が過半数とか4分の3という部分的な数で許されているのであって、集会という形式をとらないものは、いくら99.9パーセントの人が賛成だとしても、だめだということになるわけです。

 

 

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