第7 理事長

 

19  管理組合理事長を解任するときの手続きはどのようにしなければならないのですか。

 

1.管理組合の規約

    国土交通省がモデル案として示したマンション標準管理規約(平成28年3月14日版)では、理事長の選任について、その35条で、「理事は、組合員のうちから、総会で選任する。」「理事長は、理事のうちから、理事会で選任する。」と定めていました。理事長の解任についての規定はありませんでした。

    そのため、理事長を解任することができるのは、当然にその選任の主体となった理事会が解任もできる、と解釈されて来ました。実務でもふつうそのように行なわれています。このことは、その管理組合に法人格があるか、そうでないかとは関係がありません。

    理事会がその理事長の地位にある人物について、理事長解任の決議をしたときには、すぐにその効力を生じます。つまり即時に理事長ではなくなりますが、理事という資格まで失うものではありません。理事の資格まで奪うためには、改めて組合総会を開いて、理事としての解任の決議をしなければなりません。

 

  2.最高裁判所の平成28年12月28日判決

    上記の当然とも言える管理規約の解釈をはっきりと認めたのが、この最高裁判所判決でした。

    その事件では、第一審の福岡地方裁判所久留米支部も、第二審の福岡高等裁判所も、総会の理事選任権を重視して、理事会が理事長の地位だけの解任をすることを認めなかったのですが、その訴訟の最後に最高裁判所はその福岡高等裁判所の判断を取消したのでした。

    私はこの事件の勝訴した側の代理人でした。

 

  3.マンション標準管理規約の改定

    上述の最高裁判所判決が出た後、その問題点に対応するため、マンション標準管理規約の35条が改定されました。令和3年3月14日版の規約では、35条3項は、「理事長、副理事長及び会計担当理事は、理事会の決議によって、理事のうちから選任し、又は解任する。」とされています。

 

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