第7 理事長 Q20 資格のない理事たちだけで勝手に選任した偽装の理事長がいる場合には、どのような手続きでその理事長を退任させるのですか。 1.理事長の就任の無効 一般に組合の理事長は、総会で選任された理事たちが互選で、あるいはその理事たちが構成する理事会の決議で、その理事の中から選任することになっています。 ですから無資格の理事たちがその合意で理事長を選任しても、その理事長は虚偽の無効な理事長です。 そのような虚偽の理事長があたかも正式な理事長としてふるまう場合、その偽装の理事長を辞めさせるためには、法律上はどのような方法をとることになるのでしょうか。特にその管理組合が法人登記をしていて、その偽装理事長が登記上の代表者として理事就任の登記をしている場合は、その理事の登記を抹消する必要もあるわけですが、その手続きはどのようにするのでしょうか。 2.理事長を解任することの訴え 個々の組合員は1人または数人でその理事長を解任することを裁判所に請求することができます。区分所有法という法律がそのような訴えができることを定めています(区分所有法25条2項,同法49条8項)。 この方法で訴訟をするときは、ふつうは1人または数人の組合員が原告となり、その偽装理事長個人を被告として提訴することになります。 しかしこの訴訟は、表面的にせよ、その偽装者を一応は有効な代表者であることを前提として、その解任を求めようとするものですから、訴えようとする実質にそぐわないきらいがあります。 3.理事会の理事長選任決議を無効とすることの訴え そこで、2番目の方法として、資格のない理事たちだけで勝手に理事長を選任しても、その決議は無効なので、その決議が無効であることを裁判所に確認してほしいと請求する方法があります。 この方法で訴訟するときは、ふつうは1人または数人の組合員が原告となり、相手方としてはその偽装理事長個人と当該管理組合を当面仮に代表する仮理事長の両者を被告として、提訴することになります。この場合、この仮理事長は裁判所が仮処分という裁判手続きで、原告のために選任することになります。 こうして理事会決議の無効が裁判所の判決で確認されましたら、その判決が確定した時点で、偽装理事長は正式の理事長ではないことが明白になったと考えられるのです。 この場合、管理組合が法人であって、偽装理事長について代表者としての理事の登記があるときは、無効確認の判決をした裁判所はその登記をしている法務局の登記係に対して、職権をもって、その理事就任登記の抹消を嘱託することになっています。 |
目次のページへもどる |