第8 財務

 

24  滞納した管理費の請求権は何年で時効になりますか。

 

1.権利の消滅

  マンションの管理費や修繕積立金について管理組合が区分所有者に請求する権利は、一律に5年の経過によって消滅するとされています。民法166条1項(令和2年4月1日改正施行されました。)がそう定めています。

    ですから、管理費及び修繕積立金の請求は、管理規約で定めている支払期限(当該月の前月末日までに支払わなければならないと定められている例が多いようです。)の翌日から起算して5年以内に、裁判所へ訴状を提出するという方法で時効の完成を阻止しなければなりません。それをしないかぎり、その滞納額がいかに多額に及んだとしても、法律上は永久に回収の途が閉ざされることになるのです。

 

  2.令和2年4月1日の民法改正施行

    民法総則が定める債権の消滅時効規定は、平成29年の民法大改正において全面的に変更されました。平成29年6月2日に公布され、令和2年4月1日に施行された改正民法の総則規定において、その改正民法166条1項は、「債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。一 債権者が権利を行使することができることを知ったときから5年間行使しないとき 二 権利を行使することができるときから10年間行使しないとき」と定めました。

    この新規定によりますと、マンション管理組合が各区分所有者に対して有する管理費や修繕積立金の請求権は、一律に5年で消滅することになります。改正前においても、5年で時効消滅するという考え方が通説であり判例であるとされていたのですが、その内容と、改正後の新規定の166条1項1号の内容とが完全に一致することになったのです。改正民法の施行前と施行後で適用される法律は異なることになりますが、その両方の内容が完全に一致していますので、新たな問題が生じることはないと言えます。

 

  3.時効の援用ということ

    マンション管理の実務においては、長期間にわたって管理費等の滞納が放置されることのないよう、管理を厳格にすることが求められます。管理費等の個々の弁済期から5年以内に、支払督促の申立てをし、あるいは訴えの提起をする必要があります。

ただし、仮に弁済期から5年を経過した未払い分が残ったとしても、請求する側の管理組合の立場においては、支払督促の申立てまたは訴えの提起にあたって、5年を経過してしまっている分についてもまずは支払い請求をすることになるでしょう。時効による債権の消滅というものは、法律上必ず債権が消滅するのではなく、債務者が時効の利益を受けたいとの意思を表明すること(これを「時効の援用」と言います)によってはじめて、債権消滅の効果を生じるとされているからです。実際の裁判において、債務者が5年の時効期限のあることを知らず、そのため時効の援用をしなかった結果、判決において長期間の未払管理費等について支払義務を負わされるということは、しばしばみられます。

 

 4.時効の中断という概念がなくなったこと

 改正民法では、時効期間の中断という考え方が採用されていません。

 裁判上の請求や支払督促の申立てがあったときは、時効の完成が猶予されるという考え方をします。

   また、時効というものは、債務者がその権利を承認したときは、その時から新たにその時効期間の進行が始まる、とされています。

 

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