第2 マンションの売買契約

 

3 マンション分譲契約についての瑕疵担保責任は法律上どのように決められていますか。

 

1.契約不適合責任

    従来言われて来た「瑕疵」とは、目的物が通常有すると期待される性質を欠くために目的物の価値が減少することです。「隠れた瑕疵」とは、一般の取引において通常払われる注意をもってしては容易に知ることのできない瑕疵をいうとされていました。

  この瑕疵概念が令和2年4月1日施行の改正民法で全面的に改められて、従来の瑕疵担保責任に代わるものとして契約不適合責任と呼ばれるものが、新しく定められました。契約不適合というのは、その物の品質に関して「契約内容と目的物との間に不適合があること」であると説明されています。

    立法関係者の説明では、瑕疵ということと契約不適合ということは、実質的において何も変わらない、というのです。

 

  2.改正民法で定められた権利

    契約不適合責任を追及する手段として次の権利が認められました。

 ●目的物の修補請求権(新設されました。)

 ●代金減額請求権(新設されました。)

 ●損害賠償請求権(従来からあった権利ですが、その賠償の範囲が拡大されました。新しい時効制度の適用があります。)

 ●契約解除権

 

  3.その権利を行使するための条件

    買主はその契約不適合を知ったときから1年以内にその旨を売主に通知しないときは、買主は上記の4種の権利を行使できません。ただし、売主が引渡しの時にその不適合を知り、又は重大な過失によって知らなかったときは、この限りではないとされています。

ところが、現行の実際のマンション分譲契約の中には、ふつう「隠れた瑕疵については引渡し日から2年間にかぎり担保責任を負う」という特約条項が置かれていることが多いのです。この場合の解釈はどうなるのでしょうか。  つまり、民法の規定では「不適合を知ったときから1年以内」とされていますから、実際に不適合を知ったのが例えば1年半後であれば、契約の時から2年半後でも通知できる期間内になりますが、上記の契約の特則から見れば引渡しの時から2年以上経過してしまっているから、もはや通知できる期限は過ぎてしまっている、ということが起こり得るのです。

 

  4.「住宅の品質確保の促進等に関する法律」第95条の特則

    上記の問題を解決するため、同法95条に強行的に担保責任を定める規定が置かれています。その規定では、「新築住宅の売買契約においては、売主は買主に引渡したとき(住宅新築請負契約に基づき請負人から当該買主に引渡されたものである場合は、その引渡しの時)から10年間、担保の責任を負う。」とされています。

これによって、契約書の中に前述の特約条項があっても、瑕疵の通知をするべき期限は、「買主が事実を知った時から1年内」という民法の規定が同じく適用されることになるのです。

    担保される建物部位は、「構造耐力上主要な部分」と「雨水の侵入を防止する部分」の「隠れた瑕疵」であるとされています。その他の部位については、この95条の適用がありません。

    しかし、「構造耐力上主要な部分」及び「雨水の侵入を防止する部分」以外の建物部位については、消費者契約法10条の適用が可能な場合があります。 この10条の規定には、「民法の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比し、消費者の権利を制限し、又は消費者の義務を加重する消費者契約の条項であって、民法第1条第2項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するものは、無効とする。」と定められています。ですから、これに該当すれば前述の契約書の特約条項は適用されないことになるのです。

 
 

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