第8 財務

 

Q30 競売の配当では、先順位の抵当権があったとき滞納の管理費請求権は後れてしまうのですか。

 

1.強制競売の申立て

    ふつうは滞納管理費について裁判所の判決を取得しますと、管理組合としてはその判決にもとづいて、その区分所有権(マンションの専有部分と共有持分)に対して強制競売の申し立てをすることになります。その区分所有権を裁判所で売却して、その売却代金の中から滞納管理費について支払いを受けるのです。

 

  2.先順位の抵当権

    その区分所有権に先順位の抵当権があるときは、その区分所有権を差し押さえて競売に付するという方法では、滞納管理費の回収をすることが困難な場合があります。

    抵当権というのは、その登記簿上の登録の順番で、その物件の価値を担保として把握するものです。根抵当権というのもありますが、これは一定の期間内で、増減する債権を極度額の範囲で、物件の価値を把握するというものです。そういう抵当権が、先順位でその区分所有権に設定されていますと、管理組合が裁判所の判決を得てその物件に対して強制競売の申し立てをしても、その物件の売却による代金の中から配当を受けるときは、配当の順番は、先に設定されている抵当権の次になります。

    物件売却の代金が抵当権の被担保債権の額よりも多いときは、競売申し立てをした管理組合にも配当金が回ってくるでしょうが、抵当権の被担保債権の額の方が多ければ、せっかく競売申し立てをしても配当金をもらえないということが起こります。

 

  3.競売開始決定の取消

    判決にもとづいて管理組合が強制競売の申し立てをしますと、裁判所はすぐに物件評価の手続きを始めますが、その物件の評価額が先順位抵当権の被担保債権の額に満たないという見通しになったときは、その時点でその競売手続きを取りやめにして、競売開始決定を取り消します。せっかく競売の申し立てをしても、その取り消しによって手続きはそこで終了します。

    マンションの競売手続きの場合、裁判所は申立人に一律60万円の予納をさせる運用をしていますが、競売開始決定が取り消されれば、すでに予納したお金のうち物件評価手続きに使われた約25万円はもう戻ってこないということになるのです。

 


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