第11 不良入居者対策

 

37  共同利益に反する行為をやめさせる方法を説明してください。

 

1.区分所有法57条による行為差止請求

    区分所有法57条は、区分所有者が他の区分所有者の共同の利益に反する行為をした場合に、その行為を停止し、その行為の結果を除去し、またはその行為を予防するため必要な措置をとる方法について定めています。

    たとえば暴力団関係者による共同利益背反行為としては、居住用の専有部分を組事務所として使用する行為、建物の一部を事務所用に改造する行為、建物の外部に物品を付加して外観を変更する行為などがこれにあたります。

    このような行為の差止めの請求は、区分所有法58条以下に定める措置とは異なり、訴えによる必要はなく、裁判外での請求も可能ですが、確実な実効性を上げるためには、最初から裁判上の手続きをすることになります。

    訴えにおける請求の趣旨は、たとえば、「被告は別紙物件目録記載の専有部分の建物を〇〇組の事務所又は連絡場所として使用してはならない」とすることになります。

 

  2.規約違反を理由とする差止請求

    建物、敷地、附属施設の管理、使用に関する区分所有者相互間の事項は、規約で定めることができ(法30条1項)、占有者は、これらの使用方法につき区分所有者が規約または集会の決議に基づいて負うのと同一の義務を負います(法46条2項)。したがって、その規約または決議で定められている事項については、区分所有法57条の要件を具備しない場合であっても、当該規約または決議自体を根拠として、管理組合法人は自己の名において、法人格を有しない管理組合は権利能力なき社団として民事訴訟法29条により、また管理者は区分所有法26条4項により、それぞれ区分所有者全員のために差止訴訟を提起することができます。

    ただし、このような方法で訴訟をすることができるのは、規約において区分所有者の義務が法的拘束力を持つものとして具体的に規定されている場合に限られます(濱崎恭生著『建物区分所有法の改正』[法曹会]342頁参照)。また、この場合、訴訟の提起にあたっては法57条2項に準じて、集会の決議が必要であると解されます(丸山英氣編『区分所有法[改訂版]』316頁参照)。

 

  3.暴力団構成員に対する退去請求

    マンション管理規約中に、「区分所有者は、自ら暴力団の構成員となり、又はその専有部分に暴力団の構成員を居住させ、または反復して出入りさせてはならない」との規定が存するとき(後述のQ44参照)は、その居住する人物が暴力団の構成員であるという事実だけを理由として、当該人物に対し専有部分からの退去を請求することができます。この場合、訴えの請求の趣旨は、たとえば「被告は別紙物件目録記載の専有部分の建物から退去せよ」とすることになります。

 

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