第11 不良入居者対策

 

38  不良入居者に対して専有部分の使用を禁止する方法を説明してください。

 

1.要件

    区分所有法58条の使用禁止の請求は、法57条の行為停止等の請求と法59条の区分所有権の競売の請求の中間的措置です。

    その要件は、①区分所有者が共同の利益に反する行為をし、またはその行為をするおそれがあること、②その行為による区分所有者の共同生活上の障害が著しいこと、③区分所有法57条の差止請求によってはその障害を除去して共用部分の利用の確保その他区分所有者の共同生活の維持を図ることが困難であること、です。

 

  2.請求の内容・方法

    請求の内容は、相当期間の専有部分の使用禁止です。

    「相当期間」は、区分所有法59条の競売の請求との関係からすると、あまりに長期の使用を禁止することは所有権を剥奪するのと同様の結果となりますので、数か年程度と解するのが多数説です。

    なお、どの程度の長期間が必要であるかについては、裁判所が諸般の事情を考慮して定めるものですから、訴状の請求の趣旨にはこの期間を記載する必要はなく、たとえ記載がされていたとしても、裁判訴はこれに拘束されないというべきであろうとする見解もあります(丸山編・前掲書321頁[山口])。しかし、期間の問題は重要な争点となるものですから、訴状には期間を明示する必要があり、その期間の範囲内で裁判所が認定するものと考えるべきでしょう(同旨:篠田省二編『現代民事裁判の課題(6)802頁[永井ユタカ])。

    本条の請求は訴えをもってしなければなりません。請求の趣旨は、たとえば「被告による別紙物件目録記載の建物専有部分の使用を本判決確定の日から3年間禁止する」となるでしょう。

 

  3.裁判・執行

    使用禁止の請求を認容する判決は、法律関係を新しく形成する内容の判決であり、この判決によって、判決が定めた期間、その区分所有者による専有部分に対する使用禁止義務が発生することになります。この判決により、その区分所有者およびその家族などの占有補助者は、その期間中専有部分および共用部分の使用が禁止されます。ただし、当該区分所有者が他にこれを賃貸するなどして第三者に使用させる行為、当該区分所有者による専有部分の保存行為は許されます。

    この判決によって発生するその区分所有者の義務は、いわゆる不作為・不代替義務ですから、これに対する強制執行は、民事執行法172条の間接強制の方法により行うことになります。つまり、執行する裁判所が、債務者に対し、債務の履行を確保するために相当と認める一定の額の金銭を債権者に支払うべき旨を命ずるという方法をとるのです。

 


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