第11 不良入居者対策

 

39  不良入居者を排除する方法にはどのようなものがありますか。

 

1.排除方法の類型

    不良入居者とは、マンションの共同生活に有害なこと(共同利益背反行為とも言います。)を常習的にする人です。たとえば、規約違反常習者、暴力団構成員などです。

    このような不良入居者をマンション内から排除する方法として、次の3種類があります。第1は、その人の行為そのものを差し止めること、第2は、その人が使用する専用部分について建物使用そのものをさせないようにすること、第3は、その人が有している区分所有権および敷地利用権を競売手続によって他に売却してしまうことです。

 

  2.区分所有法57条ないし60条

    区分所有法57条から60条は、区分所有者・占有者が建物の保存に有害な行為その他建物の管理または使用に関して区分所有者の共同の利益に反する行為をした場合、またはそのおそれがある場合に義務違反者に対して他の 区分所有者の全員または管理組合法人がとりうる措置を定めています。

    すなわち区分所有者に対しては、①行為差止めの請求(法57条)、②使用禁止の請求(法58条)、③競売の請求(法59条)を定め、占有者に対しては、①行為差止めの請求(法57条)、②引渡請求(法60条)を定めています。順次に強力な措置となっています。共同利益が侵害される程度に応じて、この中からもともと適切な措置を選ぶことになります。

 

  3.管理組合が持つ集団的権利

    これらの請求は、区分所有者全員または管理組合法人の「集団的利益」として認められたものです。個々の区分所有者はもちろん、個人として、物権的請求権、人格権、不法行為などを根拠として救済を求めることはできますが、その救済の方法は前述の行為差止めという方法しか使えませんので、これだけでは不十分です。義務違反者による侵害を排除することは、個々の区分所有者の権利による措置だけでは困難であり、管理組合が区分所有者を統率し集団的権利をして行使することが不可欠なのです。

    前述のとおり、区分所有法57条から60条まで定められた請求は順次段階的に強力な措置として規定されていますが、これらの請求は段階を追って請求しなければならないものではありません。上記各請求はそれぞれ要件を異にしており、また、切迫状況があり使用禁止でなければ目的も達し得ない場合においては、差止請求を経ずに直ちに使用禁止の請求や競売の請求をすることも認められます。

 

 

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