第3 共用部分

4  管理人室は共用部分なのですか。

 

1.専有部分と共用部分のちがい

    共用部分は区分所有権の対象とはならず、マンション建物全体の部分を構成するものです。ですから、その部分が独立して取引の対象とされることはありません。その部分が登記されるということもありません。とうぜんに管理組合が管理すべきものです。

    これに対し専有部分は、独立して建物としての用途に供され、区分所有権の目的となる建物部分であり、所有権の保存登記ができます。

 

  2.両者を区別する基準

    裁判所は、この両者を区別する基準として、構造上の独立性と利用上の独立性のあることが専有部分の要件だ、としています。

    構造上の独立性とは、隔壁、階層等により独立した物的支配に適する程度に他の部分と遮断されその範囲が明確な建物部分をいい、必ずしも周囲すべてが完全に遮断されていることを要しない、とされています。

    また、利用上の独立性とは、①共用設備が建物部分の小部分を占めるにすぎず、その他の部分をもって独立の建物と同じ態様の排他的利用ができること、②この排他的利用は、他の区分所有者により共用設備の利用や管理がなされることが排他的利用の制限や障害にならないこと、③他方、この排他的利用が共用設備の保存および他の区分所有者の利用に影響を及ぼさないこと、とされています。

 

  3.管理人室

    ふつう管理人室は、上記の利用上の独立性を欠くことが多いでしょうから、共用部分と見られることになります。

    しかしその独立性が強くなってくると、専有部分として扱われて、管理組合の管理権限が及ぶかどうかが問題になることがあります。

    では、次図のような管理人室の場合はどう見られるのでしょうか。平成5年2月12日最高裁判決では、これが問題となりました。

 
管理人室


   最高裁の判決では、次のような説明があり、この管理人室は共用部分である、とされました。

    「本件マンションは、比較的規模が大きく、居宅の専有部分が大部分を占めているため、区分所有者の居住生活を円滑にし、その環境の維持保全を図るため、その業務にあたる管理人を常駐させ、多岐にわたる管理業務の遂行にあたらせる必要があるというべきであるが、本件マンションの玄関に接する共用部分である本件管理事務室のみではそれが困難である。したがって、本件管理人室は本件管理事務室とあわせて一体として利用することが予定されていたものというべきであり、両室は機能的にこれを分離することができない。そうすると、本件管理人室には、構造上の独立性があるとしても、利用上の独立性はないので、区分所有権の目的とはならない。」ということでした。

 
 

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