第11 不良入居者対策

 

Q40  不良入居者を排除するため区分所有権について競売請求をする方法を説明してください。

 

1.意義・要件

    区分所有法59条は、区分所有者が持つ区分所有建物についての所有し処分する権利に重大な制約を加えて、悪質な不良入居者を管理組合構成員から排除する、強力な措置です。

  要件は、専有部分の使用禁止の請求(法58条1項)より厳しく、他の方法によっては共同生活上の障害を除去して共同生活の維持を図ることが困難であることが必要です。

    この要件を具備するかどうかが争点となった事案において、福岡地方裁判所の平成24・2・9判決は、「被告が本件専有部分の使用の禁止の判決確定後も本件専有部分の区分所有権等を第三者へ譲渡せず、または譲渡できず、同判決で定められた期間経過後に再び本件専有部分を自ら使用する可能性は相当程度高度であるといえる」こと、「被告が本件専有部分を住戸として使用していると称していても、事実上暴力団事務所として使用する可能性があること」を理由として挙示し、区分所有法58条の禁止の方法では他の区分所有者の共同生活の維持を図ることが困難であると判断しました。

 

  2.請求の内容・方法

    本条の請求は訴えをもってしなければなりません。訴えの請求の趣旨は、たとえば「原告は、被告が有する別紙物件目録記載の区分所有権及び敷地権について競売を申し立てることができる、との判決を求める」となります。

    なお、競売を認容する判決の主文に仮執行宣言を付することができるかについては、これを付した裁判例と付さなかった裁判例があります。その判決によって初めて法律関係が生じるという性格の判決に、仮執行宣言を付することができるか否かは肯否が分かれるところですが、競売請求を認容する判決が直ちに実体的な区分所有関係に変動をもたらすものではないことからすれば、結論が明白で必要性もある事案については肯定すべきと思われます。

 

  3.裁判・執行

    区分所有権の競売請求に対する判決は、原告に対し、当該区分所有権およびその敷地利用権を競売することができるとする判決であり、その性格は、原告に競売権を創設する形成判決です。判決が確定すれば、原告は裁判所に対し区分所有建物の競売の申立てをすることができます。この申立ては、民事執行法195条の「その他の法律の規定による換価のための競売」であると解されています。

    この申立ては、判決確定の日から6か月を経過したときはすることができません(区分所有法59条3項)。また、この競売においては、当該区分所有者またはその者の計算において買受けをしようとする者は、買受けの申出をすることができません(同条4項)。

    民事執行法195条の「その他の法律の規定による換価のための競売」手続において、目的不動産上に抵当権・先取特権が存する場合の処置については、かつては議論がありましたが、現在の競売実務においては、ふつうの不動産執行におけると同様に担保権は売却によって消滅し(民事執行法59条)、売却代金は順位に応じた配当に付せられています。

    また、この競売手続の趣旨からして、上記の剰余を生ずる見込みのない場合であっても、そのときの民事執行法63条の制約措置は、受けないものとされています。

 

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