第11 不良入居者対策

 

41  不良入居者である賃借人を専有部分から排除する方法を説明してください。

 

1.意義・要件

    区分所有法60条は、賃借人など専有部分の占有者が不良入居者である場合に、その占有者からその占有権を剥奪し、区分所有建物の利用関係から排除する措置を定めています。その専有部分を管理組合側に引渡させることができる、とされています。

    この引渡請求が裁判で認められた事例として、暴力団組長が賃借して使用していた場合や、賃借人が特殊な宗教団体(オウム真理教)の教団施設として使用していた場合などがあります。

 

  2.要件・請求の内容・方法

    要件は、区分所有権の競売請求(法59条1項)と同一です。

    この請求は、占有者の占有の基礎となった契約の解除と専有部分の引渡の請求であり、訴えをもってしなければなりません。

    占有者の占有権限となる契約の当事者双方について合一的に画定される必要がありますから、区分所有者である貸主と、その賃借人である借主の双方を共同の被告とする必要があります。

    請求の趣旨は、たとえば「被告〇〇と被告△△との間の別紙物件目録記載の建物部分に関する賃貸借契約を解除する。被告△△は原告に対し別紙物件目録記載の建物部分から退去してこれを引き渡せ。」となります。

    なお、占有者が無権限者であるときは、契約解除の必要はありませんから、占有者のみを被告として訴訟を提起すればよいことになります。しかし現実には、貸主・借主間の関係は不明であることが多く、訴え提起の段階では両名を共同被告として提訴し、この関係が判明した段階で請求の趣旨を変更することになるでしょう。

 

  3.裁判・執行

    占有者に対する引渡請求を認容すべきときは、裁判所は、契約の解除と専有部分の引渡しを命ずる判決をします。

    この判決は、第三者の請求によって契約の解除を命ずる形成判決です。この引渡し判決についての強制執行は、通常の不動産の明渡しと同様の方法で行います。つまり、執行官が債務者の目的物に対する占有を解いて債権者にその占有を取得させるという方法で行うのです(民事執行法168条1項)。なお、専有部分の引渡しを受けた原告(管理組合)は、これを遅滞なく、占有権限を有する者に引き渡さなければならないとされています(法60条3項)。

 
 

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