第11 不良入居者対策

 

44  暴力団関係者が入居するのを事前に阻止する方法はありますか。

 

1.管理規約による防禦

  暴力団関係者が区分所有権の譲り受け、あるいは賃借という形で、いったん入居してしまいますと、それを退去させるのは容易なことではありません。区分所有法57条以下の諸規定を利用して退去させることは可能ですが、実際にそれを行なうには大変な苦労と費用が必要です。できることであれば、暴力団関係者の入居を事前に防ぐことを考えるべきです。

  そのマンションが暴力団関係者の入居に適していなければ、入居して来る危険は少ないはずです。入居に適さない環境にするには、次のような方法があります。

  第1には、専有部分の使用目的を管理規約で限定しておくことです。マンション標準管理規約(国土交通省作成)では、専有部分の用途として、「区分所有者は、その専有部分を専ら住宅として使用するものとし、他の用途に供してはならない」と定めています。このような規定があれば、専有部分が組事務所として利用されることに対する牽制になります。しかし、この規定だけでは、暴力団関係者が自分の住居として使用することまでは防げません。そこで、上記のような規定だけでは不十分であるとして、独自の規約を定めることがあります。たとえば、次のとおりです。

(1) 区分所有者は、その専有部分を暴力団の構成員またはその組織、その他マンションの共同生活を乱す行為をするおそれのある者に対して、譲渡または貸与してはならない。

(2) 区分所有者は、自ら暴力団の構成員になり、あるいはその専有部分に暴力団の構成員を居住させ、または反復して出入りさせてはならない。

   2.専有部分を譲渡し貸与するときのルール

  管理規約の中で「暴力団構成員にその専有部分を譲渡又は貸与してはならない」と定めていても、そのような譲渡や貸与がこの規定を無視して行われてしまった場合には、その譲渡や貸与そのものを無効とすることはできません。

  したがって、管理組合としては、譲渡や貸与を、前もって察知し、阻止のための対応行動がとれるようにしておくほかはありません。そのため、マンションの管理規約の中に事前届出の制度を定めることがあります。たとえば、次のような規定を置くのです。

専有部分の譲渡および貸与)

 区分所有者は、その専有部分を第三者に譲渡または貸与しようとする場合は、その予定日の20日以前に、別に定める第〇号書式により、管理組合に予告届を提出しなければならない。

 

  3.マンション標準管理規約の19条と19条の2

  国土交通省の標準管理規約では、専有部分の貸与の場面に限定して次の規定をおくことが提案されています。

第19条(専有部分の貸与)

① 区分所有者は、その専有部分を第三者に貸与する場合には、この規約及び使用細則に定める事項をその第三者に遵守させなければならない。

② 前項の場合において、区分所有者は、その貸与に係る契約にこの規約及び使用細則に定める事項を遵守する旨の条項を定めるとともに、契約の相手方にこの規約及び使用細則に定める事項を遵守する旨の誓約書を管理組合に提出させなければならない。

第19条の2(暴力団員の排除)

① 区分所有者は、その専有部分を第三者に貸与する場合には、前条に定めるもののほか、次に掲げる内容を含む条項をその貸与に係る契約に定めなければならない。

 一 契約の相手方が暴力団員(暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(平成3年法律第77号)第2条第六号に規定する暴力団員をいう。以下同じ。)ではないこと及び契約後において暴力団員にならないことを確約すること。

 二 契約の相手方が暴力団員であることが判明した場合には、何らの催告を要せずして、区分所有者は当該契約を解約することができること。

三 区分所有者が前号の解約権を行使しないときは、管理組合は、区分所有者に代理して解約権を行使することができること。

② 前項の場合において、区分所有者は、前項第三号による解約権の代理行使を管理組合に認める旨の書面の提出をするとともに、契約の相手方に暴力団員ではないこと及び契約後において紡織団員にならないことを確約する旨の誓約書を管理組合に提出させなければならない。

 



目次のページへもどる