第12 生活紛争

 

45 水道料金を支払わない区分所有者に対して給水を停止することができますか。

 

1.水道の給水方式

    マンションの水道の給水の方法としては、九州地区では親メーター方式が主流です。つまり、マンション建物の本体に設置された量水計のメーターで、マンション全戸が使用する全水量(これには各戸のほか、共用区画や外構で使用する水道水の使用量も含まれることになります。)を記録し、その記録にもとづいて、管理組合が自治体の水道管理者に対してまとめてその水道料金を支払うという方式です。この場合、管理組合はその責任で、水道管理者に支払う時期にあわせて定期的に、各戸の個々のメーターでそれぞれの使用水量を調査し、その調査結果にもとづいて各戸に対して戸別の水道料金を請求するのです。

    これに対して、各戸メーター方式というのがあります。つまり、水道管理者からの給水は、マンション内の各戸に直接給水することとして、水道管理者がみずから各戸の個々のメーターが示す使用水量を計測し、その各戸の水道料金は水道管理者が各戸に直接請求するというやり方です。関東地区ではこれが主流です。

    さて、表題の給水停止が可能かという問題は、上記の親メーター方式の場合に起こります。

 

  2.水道料金だけが未払いの場合

    親メーターで計量した結果にもとづいて管理組合が各戸に水道料金を請求する場合に、管理組合が他の管理費や修繕積立金の請求とは切り離して、水道料金だけを請求するというやり方をすることがあります。

    この場合は、上記の問題の解答は明らかです。3か月も支払いが滞れば、管理組合としてその給水を停止するのは当然でしょう。水道代の支払をしない人にその対価物を渡さないのは、取引上の公平の観念に照らして当然のことだと言わなければなりません。

    ただし、このような給水停止があることを管理規約に明記しておくことは、実際上のトラブルを避けるためには必要でしょう。

    また、その場合、給水を停止するやり方としては、各戸の水道導管の元栓(その存在位置は量水メーターのすぐ手前のところです。)を閉じたうえで、それに閉栓キャップをかぶせるというのがふつうです。

    その閉栓を行なう場合は、完全に栓を閉じてしまうのではなく、少量は水が流れるように閉栓をやや緩めにすることが推奨されています。入居者が少なくとも飲用水と調理用水としてどうにか足りる程度には給水することが、人道上は必要だと考えられるからです。

 

  3.管理費及び修繕積立金だけが未払いの場合

    水道料金の未払いはないが管理費や修繕積立金は支払いが滞っているという場合は、どうでしょうか。

    この場合は、管理費等の未払いを理由として水道水の供給を拒否することは、上記のような部分的な供給量のカットであっても許されないと言わなければなりません。供給水と管理費とは対価関係にはないからです。

 

  4.水道料金も管理費等もまとめて滞納されている場合

  この場合は、上述の2の場合と同様です。

    水道料金が未払いになっているという限度で、給水停止の理由があります。

    この場合、管理組合としては、未納になっている水道料金を含んだ管理費等の全部についてその未納者に支払請求をするのは当然であるとしても、給水停止を実行できるのはその未払の水道料金部分が完納されるまでであることを認識しておかなければなりません。

    ですから、管理組合として未納者に対して給水停止を通告するときには、その停止は未納金全部のうち水道料金部分が完済されるまで続くことを、明示しておくことは重要であると考えられます。

 
 

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