第12 生活紛争

 

46  専有部分を賃借している人の迷惑行為を規制することはできますか。

 

1.共同の利益に反する行為

    区分所有者は、建物の保存に有害な行為その他建物の管理または使用に関し、区分所有者の共同の利益に反する行為をしてはならないとされています。(法6条1項)。これと同様の義務が、区分所有者以外の専有部分の占有者にも課せられています(同条3項)。占有者とは、自己のためにする意思をもって物を支配している者である、と定義されています。具体的には、専有部分の賃借人、寮や社宅などの形での居住者、不在所有者の留守宅の預かり人などです。

    その賃借人が建物の管理または使用に関し、マンションの区分所有者の共同の利益に反する行為をするときは、他の区分所有者の全員(通常は管理組合が全区分所有者を代理します)は、その賃借人に対して、その違反の行為を停止し、その行為の結果を除去し、またはその行為を予防するため必要な措置をとるよう請求することができる(法57条4項)ことになっています。この請求のために訴訟を提起するには集会の決議(区分所有者および議決権の各過半数で決する)によらなければなりません(同条2項)。

    賃借人の上記の違反行為による区分所有者の共同生活上の障害が著しく、他の方法によってはその障害を除去して共用部分の利用の確保その他の区分所有者の共同生活の維持を図ることが困難であるときは、区分所有者の全員(通常は管理組合が全区分所有者を代理します)は、その専有部分について賃貸借契約の解除と引渡しを請求することができます(法60条1項)。

 

  2.規約および集会決議の賃借人に対する効力

    賃借人は、建物またはその敷地もしくは附属設備の使用方法について、区分所有者が管理規約または集会の決議に基づいて負う義務と同一の義務を負います(法46条2項)。賃借人がこの義務を負うのは、「建物等の使用方法に関する義務」に限られます。その場合の使用方法に関する義務の範囲は、一般的にいえば、建物等の物的利用にかかわる共同生活上の諸規則(その違反行為に対する制裁措置の定めを含めてのことです)に基づく義務です。たとえば廊下、エレベーター、駐車場、集会室などの使用についての規則や、専有部分内でのペット飼育、深夜のピアノ演奏の禁止の方法を定めた規則などは、その典型的な例です。

    そういう立場の賃借人は、建物等の使用方法に関して区分所有者と同一の義務を負いますので、組合の総会が賃借人にも関係するような規約の設定・変更や決議をするときは、その決議について利害関係を有することになります。そこで、賃借人に利害関係のあるような決議をする場合には、賃借人は組合の総会に出席して意見を述べることができるとされています(法44条1項)。

 
 

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