第12 生活紛争

 

49  マンションでの紛争が訴訟になるとき誰がその訴訟の当事者になるのですか。

 

1.訴訟当事者

    訴訟の当事者というのは、訴訟を提起する側としての原告と、提起される側としての被告のことです。

    マンション訴訟の関係では、管理組合、管理者、個人(自然人と称されています。)がその原告または被告になります。

 

  2.管理組合

    区分所有法3条で、管理組合というものは、「区分所有者は全員で建物並びにその敷地及び附属施設の管理を行うための団体を構成する」ものとして、法律上当然に存在する、と定められています。その組合に法人格があるかないかで、次の二つに分類されます。

 ① 権利能力なき社団

   「法人でない社団で代表者の定めがあるものは、その名において訴え、または訴えられることができる。」(民事訴訟法29条)

 ② 管理組合法人

   「区分所有法第3条に規定する団体は、……登記をすることによって法人となる。」(区分所有法47条1項)

 

  3.管理者

    共用部分の保存、集会決議の実行、規約で定められた行為など、マンションの管理事務を行なう者として、「管理者」という者を置くことができるとされています(区分所有法26条)。

    マンション管理組合の理事長は、この管理者に該当するとされています。

    管理者はその職務に関し区分所有者を代理します(区分所有法26条2項)。共用部分等について生じた損害賠償及び不当利得による返還金の請求及び受領についても同様だとされています。

    管理者は、規約又は集会の決議により、その職務に関し、区分所有者のために、原告又は被告となることができるとされており(区分所有法26条4項)、この地位は学説のうえで任意的訴訟担当と称されています。

   「原告又は被告となる」ということは、管理者が自分の名において訴訟の当事者となるということであって、区分所有者の訴訟代理人となるということではありません。

 

 4.個人(自然人)

 理事長が管理組合の代表者としてではなく、個人として被告にさせられることがあります。理事個人、監事個人であっても同じです。また、個々の区分所有者が個人として原告または被告になることがあります。

 区分所有者は、共用部分及び敷地について共有持分権を有しますし、また、専有部分の所有権者でもありますので、その立場で訴訟当事者になることがあります。

   さらに、区分所有者は、集会において組合のために特に、訴訟の担当者に指名されることがあります。区分所有者の共同の利益に反する行為があったときにそれに適切な対応措置を取ることが総会で決ったとき、その総会の決議で訴の訴訟担当者を決めることができます(区分所有法57条~60条)。このような指名による訴訟追行者も、講学上、任意的訴訟担当と称されています。

 

 5.占有者

 専有部分の使用を許されて現実に入居している者を占有者と呼びます。例えば、賃貸借契約による賃借人、社宅扱いの専有部分に居住する会社従業員などがこれに当たります。

 占有者は、建物又はその敷地もしくは附属施設の使用方法につき、区分所有者と同一の義務を負うこととされています(区分所有法46条)。

 



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