第12 生活紛争

 

50  マンション紛争の裁判で当事者となるためにはどのような資格が必要ですか。

 

1.マンション紛争の当事者適格

 マンションにおける紛争について訴訟の場で解決を図るときは、その当事者が持つ実体的な権利や義務を根拠として結論が導かれます。ですから、まずは、その権利や義務の主体となる資格が存在することを前提として、そのマンション紛争を誰と誰との間で解決するのが適切かという視点で、当事者適格の有無を考えることになります。

 区分所有者について言えば、区分所有者は専有部分につき区分所有権を有し共用部分や敷地につき共有持分権を有しますから、個々の区分所有者は、このような権利をめぐる紛争について、その権利を根拠として当事者として自己の利益の実現をはかることができる立場です。

また、管理組合が実際に機能しているのであれば、管理組合の権利をめぐる紛争について、管理組合は当事者として自己の利益の実現を図ることができます。そのような訴訟において法人の登記をした管理組合(○○○○管理組合法人と称します。)は、当然、訴訟当事者となります。法人の登記を経由しない管理組合は、いわゆる「権利能力なき社団」ですが、管理規約に代表者の定めがあれば(裁判所へ管理規約のコピーを提出してそのことを証明します。)、訴訟の当事者となることができるのです(民事訴訟法29条)。

 

2.任意的訴訟担当

   管理者は、その職務に関して区分所有者を代理する立場です(区分所有法26条2項)。管理者は、区分所有者に代わって保険会社に損害保険金を請求したり、共用部分について生じた損害賠償金や不当利得金を第三者に請求したりすることもできます。その場合、管理者は規約又は集会の決議を得て区分所有者のために訴訟上の原告又は被告となることができます(区分所有法26条4項)。

 管理組合法人も、その事務に関して規約又は集会の決議を得て、上記の管理者と同様、区分所有者のために訴訟上の原告又は被告となることができます(区分所有法47条8項)。

 

3.管理規約をめぐる紛争

 管理組合が個々の区分所有者から管理費や修繕積立金を徴収するという法律関係は、管理規約に定められています。多くのマンション管理組合では、マンション標準管理規約と同様の管理規約を持っていると考えられますので、その規約を見てみますと、第25条で「区分所有者は管理費、修繕積立金を管理組合に納入しなければならない。」としています。したがって管理組合は、原告となって訴訟上の請求をすることができます。

この場合、管理組合総会における事前の承認は必要ではありませんが、同規約の60条4項には「理事長は、未納の管理費等及び使用料の請求に関して、理事会の決議により、管理組合を代表して、訴訟その他法的措置を追行することができる。」とされていますので、理事会の承認は必要です。

また管理費の請求について管理者である理事長個人が原告となることも可能です(法26条4項)が、この場合は法律の規定どおり管理組合総会の承認が必要です。

   管理規約において建物、敷地、附属施設の使用方法に関する行為の制限ないし禁止が定められることがあります。各区分所有者(又は占有者)がこの規約によって負う義務は、直接的には管理組合に対する義務ですから、これに対応する権利は管理組合が有すると解されます。したがって管理組合は規約で定めるところにより、違反行為に対して違約金を課すること、その違反行為を停止しその行為の結果を除去し又はその行為を予防するため必要な措置をとることを、訴訟の原告となって請求することができると考えられます。

 

目次のページへもどる