第3 共用部分

Q6  共用部分について第三者に対し明渡・妨害排除請求をするとき、誰がその請求をするかについて説明してください。

 

1.問題の所在

    次のような事例の場合、どうするのかというのが問題になります。

 (事例1)分譲業者が第三者に対し勝手に屋上看板の設置を許してそのままになっている場合、その屋上看板の撤去を求めるにはどうするか。

 (事例2)行方不明の区分所有者が所有する専有部分に、勝手に入居している第三者が駐車区画も勝手に使っている場合、その駐車区画の明渡しを求めるにはどうするか。

 

  2.個々の区分所有者がする請求

    各区分所有者は、共用部分及び敷地について共有持分(所有権)を有します。このような所有権者は民法上(198条の類推)、第三者に対して妨害排除請求権が認められています。

    この妨害排除請求をすることについて、管理組合の承認はいらないと考えられています。

 

  3.管理組合法人がする請求

    管理組合法人は、その事務(建物並びにその敷地及び附属施設の管理を行うこと)に関し区分所有者を代理することになっています(区分所有法47条6項)。

    管理組合法人は、規約又は集会の決議によりその事務に関し区分所有者のために原告又は被告となることができます(区分所有法47条8項)。

    管理組合法人は、各区分所有者が有する妨害排除請求権を行使することになります。

    訴訟上の請求をするには管理組合総会の承認(過半数の賛成)が必要であると考えられます。

 

  4.管理者がする請求

    管理者とは「共用部分並びに建物の敷地及び附属施設を保存し集会の決議を実行する権利を有し義務を負う」立場の者です(区分所有法26条1項)。マンション標準管理規約38条2項は、「理事長は区分所有法に定める管理者とする」と定めています。

管理者は、その職務(マンション標準管理規約38条1項に規定されています。)に関して、区分所有者を代理することになります(区分所有法26条2項)。

管理者は、規約又は集会の決議によりその職務に関し区分所有者のために原告又は被告となることができます(区分所有法26条4項)。

管理者は、各区分所有者が有する妨害排除請求権を行使することになります。

訴訟上の請求をするには管理組合総会の承認(過半数の賛成)が必要であると考えられます。

 

5.管理組合(権利能力なき社団)がする請求

管理組合は建物並びにその敷地及び附属施設の管理を行うことを目的とする、区分所有者の団体ですが、区分所有者そのものではありません。したがって管理組合は、各区分所有者が有する妨害排除請求権を第三者に対して行使する立場にはないのです。

しかし管理組合法人であれば、前述のとおりその事務(建物並びにその敷地及び附属施設の管理を行うこと)に関し区分所有者を代理することができます(区分所有法47条6項)。管理組合は法人格こそありませんが、その性格は管理組合法人と完全に同じです。そうであれば法人格のない管理組合にも、その事務に関して区分所有者を代理することを認めるのが相当であると考えられるのです(区分所有法47条6項の類推)。

法人でない社団で代表者又は管理人の定めがあるものは、その名において訴え又は訴えられることができます(民事訴訟法29条)。

管理組合が民事訴訟法29条にもとづいて訴訟上の請求をする場合、管理組合法人の場合と同様、「規約又は集会の決議による」ことが必要であると考えられます。

 

6.第三者に「区分所有者の共同の利益に反する行為」がある場合

専有部分の占有者が「建物の保存に有害な行為その他建物の管理又は使用に関し区分所有者の共同の利益に反する行為をした場合は、妨害排除の請求ができます(区分所有法57条1項)。

しかし、上記事例1の場合について言えば、その第三者は専有部分の占有者とは言えません。また事例2の場合は、その第三者の行為は共同の利益に反する行為とは言えません。

 

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