第3 共用部分

 

Q7  マンション建物の共用部分を組合員以外の者に賃貸しするときは理事会で決議するだけでいいのですか、それとも総会で決議する必要がありますか。

 

1.共用部分を第三者に賃貸しすること

    共用部分とは専有部分以外の建物の部分のことです。この部分は本来、組合員全員のために使用することを目的としていますので、ふつうはこれを組合員以外の者に賃料を定めて貸すことはありません。

    しかし、例外的にこの共用部分について、賃貸借契約を結んで第三者に貸出すことがあります。その場合、その貸出しについて、理事会の決定だけでこれができるのでしょうか。それとも総会で決議する必要があるのでしょうか。

 

  2.敷地の一部分を自動車の駐車場として貸し出すこと

    マンション敷地は区分所有者全員の共有物ですから、建物の共用部分と同様に取扱われます。

    そこで、この敷地の特定部分を駐車場として区画割りをした上で、自動車の駐車用地として組合員以外の第三者(たとえば専有部分の賃借人)に賃貸しするためには、当然ですが、管理組合そのものの承諾が必要です。

    ふつうは、管理規約の中で、駐車場使用契約により賃貸することができると、定められているはずですから、その定めに従うことになります。通常はその駐車場使用契約を結ぶという事務は、理事会が担うことになります。

 

  3.建物外壁を広告用看板の設置場所として第三者に貸し出すこと

    建物の外壁の一部分を、店舗としての専有部分の使用者に対して、看板設置場所として貸し出す例があります。

    建物の外壁は、本来マンション建物の構成体そのものであり、外観の核心をなすものですから、その一部であっても店舗営業の宣伝用看板を設置をする場所ではありません。

    したがってその外壁について宣伝用看板の設置場所として、その使用を許す場合には、共用部分の使用目的を本質的に変更するものとして、総会での承認決議が必要です(区分所有法17条1項)。この場合は、区分所有者及び議決権の各4分の3以上の多数による、いわゆる特別決議が必要です。

 

  4.建物内部の共用室を事務所として第三者に貸し出すこと

    建物内部に共用部分として集会室や娯楽室があったとき、その使用目的を変更して、第三者に事務所として賃貸しする例があります。

    このような共用部分の使用目的の変更は、区分所有法17条1項に言う変更に当たります。共用の集会室や娯楽室が第三者使用の事務所に変わることは「効用の著しい変更」に当たりますので、当然この17条1項が適用されるのです。

    福岡地方裁判所が令和元年10月1日に判決した事件はそのような事案でした。この事件では、共用部分としての玄関横のラウンジ部分を、第三者に宝飾店の店舗として貸し出すには、総会における4分の3以上の多数決による承認が必要である、とされました。そのマンションの理事会では理事の全員一致で宝飾店への賃貸しを承認していたのですが、裁判所はこの理事会決定そのものが有効ではない、と判断したのです。

 

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